1. はじめに
このコンテンツは、IBIS-AMI を使用して PCI Express Gen4 : 16 Gbps の伝送路シミュレーションを HyperLynx SI を用いておこなうための手順を紹介します。HyperLynx SI 及び IBIS-AMI を使用したシミュレーションを初めておこなう方に参考にしていただける内容となっています。
今回は HyperLynx の LineSim (Pre-Layout 解析)機能を使用して、レイアウト前に解析をおこなう場合を想定しています。使用するデバイスモデルは Agilex™ 7 FPGA F-Tile デバイスのものを使用します。
参考:
HyperLynx SI とは:
シグナル・インテグリティ解析ツールです。SerDes チャネル、DDRx メモリ インターフェイス、および汎用シグナル インテグリティのレイアウト前およびレイアウト後の検証をおこないます。
IBIS-AMI (Algorithmic Modeling Interface) とは:
従来の IBIS モデルではFFE、リニアイコライゼーション、DFE、CDR、混合した信号の処理ブロックのモデル化する機能を持っていません。
IBIS-AMI は高速チャネルの迅速で正確な統計分析と時間領域シミュレーションを可能にする目的で開発されました。高速トランスミッター及びレシーバー・モデルを実行可能ファイルとして提供し、数百万ビットのシミュレーション、クロストーク/ジッターの解析、データパターンの傾向、イコライザーや CDR などの複雑なブロックのモデル化を可能にします。
IBIS-AMI は以下の3つのモデルファイルで構成されます。
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IBIS ファイル (.ibs):バッファモデルのアナログフロントエンド
AMI パラメーターファイル (.ami):イコライゼーションや CDR コンフィグレーションのシミュレーション・パラメーター
アルゴリズム実行形式ファイル (.dll / .so):プリエンファシス、CTLE、DFE、CDR、ADCE をモデル化した AMI の動作プログラム本体
高速シリアルインターフェースの波形について:
スペシャリストコラム:高速シリアル信号の波形
2. シミュレーション準備
シミュレーション実施のための準備をおこないます。
2-1. シミュレーションの概要
今回実施する SERDES 回路のシミュレーションを実施するには下記の要素が基本構成となります。
TX(トランスミッター)、RX(レシーバー) の IBIS-AMI モデル、およびパッケージモデルはデバイスメーカーより入手します。
PCB は基板の要素となりご使用のシステムに合わせて S-Parameter などを使用します。S-Parameter は基板より測定器を使用して抽出したり、CAD ツールから出力したもの等を使用します。
2-2. 使用ツールとモデルファイルの準備
このコンテンツで使用するツールとモデルは以下の通りです。
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シミュレーター
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HyperLynx SI VX.2.13 (シーメンス EDA 製品)
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IBIS-AMI モデルとパッケージモデル
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Agilex™ 7 F-Tile General Purpose Transceiver Block IBIS-AMI Model Version 1.7
アルテラ®より入手(担当営業までご連絡ください)
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2-3. HyperLynx の起動
HyperLynx SI PI Thermal VX2.13 を起動し、File メニュー > New Free=Form Schematic > SI を選択して Schematic Editor を開きます。
2-4. 準備した IBIS-AMI モデルを HyperLynx へインポート
メーカーより入手した IBIS-AMI モデルを HyperLynx で使用するために下記の手順で設定をおこなう必要があります。※すでに設定されている場合は次のセクションへ進んでください。
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Models メニュー > Edit Model Library Paths… を選択します
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Model-library file path(s) 欄の Edit を開きます
Select Directions for IC-Model Files ウィンドウで使用するモデルが含まれるフォルダーパスを Add もしくは Add with Subfolder で設定します
2-5. トポロジーの作成
Schematic Editor を使用してチャネルのトポロジーを作成します。下図はチャネルを構成する際の対応イメージです。
2-5-1. TX モデルの追加
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差動バッファモデルを選択します
2-5-2. RX モデルを追加
TX と同様に RX モデルを追加します。
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Select IC Model で Libraries: agilex_f_gp > Devices: agilex_f_gp > Signal: Rx を選択します
Rx モデルが割り当てられます
2-5-3. TX パッケージ S パラメーターモデルを追加
TX のパッケージモデルを追加します。
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S-Parameter モデルを追加しダブルクリックします。
Assign S-Parameter/SPICE Model で Touchstone でフィルタリングし、Agilex_Ftile_FGT_DC_70GHz_TX_Typ.s4p を選択します
ウィンドウ下部の Ports 欄 > Side 項目のプルダウンで、Port1/2 を Side: left に Port3/4 を Side: right に設定します
モデルとポートが設定された S-Parameter 素子の表示になります
2-5-4. RX パッケージ S パラメーターモデルを追加
TX と同様に RX のパッケージモデルを追加します。
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S-Parameter モデルを追加しダブルクリック、Assign S-Parameter/SPICE Model で Touchstone でフィルタリングし、Agilex_Ftile_FGT_DC_70GHz_RX_Typ.s4p を選択します
ポート配置を Port1/2 を right、Port3/4 を left に設定します
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モデルとポートが設定された S-Parameter 素子の表示になります
2-5-5. 追加した各素子を接続
この記事では、PCB モデルは無しで解析をおこないます。
2-5-6. 作成した Schematic を保存
File メニュー > Save As… で任意のファイル名(拡張子は .ffs)で保存します。
3. シミュレーション実施
作成した Schematic を使用してシミュレーションを実施します。
3-1. 使用する解析機能
今回は SERDES IBIS-AMI Batch Wizard を使用します。SERDES IBIS-AMI Batch Wizard では回路図(Schematic)またはボード デザインで複数の SERDES チャネルを IBIS-AMI モデルを使用してシミュレーションすることが可能です。
このシミュレーションによりチャネル トポロジ、Rx/Tx パラメーター、ジッター、およびクロストークがチャネルに与える影響を調査します。
3-2. SERDES IBIS-AMI Batch Wizard の設定
Wizard に沿って設定をおこないます。
3-2-1. Analysis Options
解析対象のネットと使用するプロトコルを選択します。
① 解析対象のネット : Net002 <-> Net001 を選択
② 使用するプロトコル : Protocol : PCIE、Type : PCIE4.0-16Gts Electrical Channel を選択
③ Wizard の設定ファイルの名前とパスを指定
3-2-2. Transmitters/Receivers
解析対象ネットの TX / RX を設定します。今回はモデルが割り当てられているため、U1 が TX、U2 が RX に自動設定されます。
3-2-3. Advanced Eye Diagram
解析のタイプ、スティミュラス、アイマスク等の設定します。
① 解析タイプとモデル : Time-domain と Typical を選択
② スティミュラス : Modulation は NRZ、Sequence は 128b130b を選択
③ アイマスク : System PCIE_GEN4_RX を選択
3-2-4. Endpoint 1
Endpoint 1 (TX) の AMI パラメーターの設定をおこないます。今回はデフォルト設定を使用します。
3-2-5. Endpoint 2
Endpoint 2 (RX) の AMI パラメーターを設定します。Modulation = NRZ に変更します。
3-2-6. Parameter Sweep
シミュレーションに使用するパラメーターのスイープ設定が可能です。今回はデフォルト設定(スイープ OFF)です。(※ スイープ機能により、複数の設定を一括してシミュレーション可能になります)
3-2-7. Channel Sweep
チャネル(伝送線路)のパラメータースイープ設定が可能です。今回はデフォルト設定(スイープ OFF)です。
3-2-8. Report Options
レポート出力に関するオプション設定です。
① 設定の検証のみをおこなう(シミュレーションを実施しない): 今回は OFF(チェックしない)
② PDF のレポート出力 : 今回は OFF(チェックしない)
③ レポート出力フォルダ : 任意のパスを設定
3-2-9. Output
Run ボタンをクリックして、シミュレーション実行します。100% になるまで待ちます。(使用する環境にもよりますが、完了する間には~数十分かかる場合があります)
シミュレーションが完了すると、HTML レポートが出力されます。
4. シミュレーション結果の確認
シミュレーション完了時に表示される HTML レポートを閉じた場合は、View メニュー > HTML Report Manager から生成されたレポートの一覧が確認できますので、各レポートの右にある View リンクから対象のレポートを表示できます。
4-1.Eye Density
HTML レポート > Advanced Eye > Eye width/height measured at BER 1e-12 を開きます。リストの Eye Density Plot 欄 View をクリックします。
下記のように Eye Density プロットが表示されます。シミュレーションにより測定されているのは RX 受信談の波形です。
今回は PCIe Gen4 のマスクを適用していますが、使用するプロトコルのマスクや任意のマスクを使用して確認可能です。
以上でシミュレーションの完了です。