Transceiver Toolkit (TTK) で BER 測定は可能ですが、10⁻¹⁵ のような深い BER を直接測定するには膨大なビット伝送が必要です(10 Gbps で数日)。その為、実機での検証は現実的ではありません。
このような場合、Q-factor 法(Q-factor extrapolation)を用いることで、短時間の測定データから深い BER を推定できます。
Q-factor 法の考え方
BER と Q-factor の間には erfc(相補誤差関数)による対応関係があり、対数グラフ上でほぼ直線に並ぶ性質があります。 この性質を利用して、比較的浅い BER(10⁻⁶ ~ 10⁻⁸ 程度)の実測点から直線を延長(外挿)することで、10⁻¹⁵ 付近の深い BER を推定できます。 下のグラフでは、Q ≈ 8 のとき BER ≈ 10⁻¹⁵ に対応することが確認できます。
実際にやること
数式自体は複雑ですが、ユーザーが行う作業はシンプルです。erfc や積分などの計算を自分で行う必要はありません。
Step 1: TTK の Eye Height Measurement(EHM)で、BER ターゲットを変えながら Eye Height をそれぞれ測定する
Step 2: 結果をグラフにプロットし、直線を引いて外挿する
Step 3: BER = 10⁻¹⁵ のとき Eye Height > 0 mV なら、アイは開いている(マージンあり)と判断できる
例えば以下のような測定結果が得られたとします。
| 測定回 | BER ターゲット設定 | 結果: Eye Height |
|---|---|---|
| 1回目 | 1E-6 | 200 mV |
| 2回目 | 1E-8 | 180 mV |
| 3回目 | 1E-10 | 165 mV |
| 4回目 | 1E-12 | 150 mV |
| 外挿 | 1E-15 | ≈ 130 mV(推定) |
これをグラフにすると以下のようになります。
留意事項
Q-factor 法はノイズがガウス分布であることを前提とした推定手法です。確定性ジッタ(DJ)やクロストークなど非ガウス成分が含まれる場合、推定値と実測値に乖離が生じることがあります。コンプライアンステストの代替ではなく、設計段階でのマージン確認の目安としてご活用ください。
参考情報
Q-factor と BER の数学的関係(erfc 関数)やフィッティング手法の詳細は以下をご参照ください。
・JIS C 61280-2-8:2010 光ファイバ通信サブシステム試験方法 − Q値測定を用いた低ビット誤り率の決定法
・Q-factor - Wikipedia(英語)
・ITU-T G.976 - Test methods applicable to optical fibre submarine cable systems