こんにちは、太郎です。今回は PLL の構成要素の一つである、電圧制御型発振器( Voltage Controlled Oscillator : VCO )について書きます。
PLL と VCO の関係については こちら を参照して下さい。
VCO の概要
VCO は入力電圧に対応した周波数を出力する発振器です。以下におおまかな入力電圧と出力周波数の関係の図を示します。
PLL の構成要素の VCO は、PFD / CP から、LPF を経て来るエラー信号によって出力周波数を制御します。そして、フィードバック信号がリファレンス信号と同期するように調整されます。PLL の構成要素に関してはこちらを参照してください。
VCO の出力できる周波数範囲は様々です。以下に IDT 社製品に搭載されている VCO の出力周波数範囲を示します。
VCO の種類
VCO は大きく分けて、以下の 3 つに分類されます。
・Ring-VCO
・LC-VCO
・VCXO
これらの VCO はアプリケーションによって使い分けが行われます。
Ring-VCO
Ring-VCO はインバーターを奇数段、リング状に繋いだ発振回路です。インバーターの段数とゲート遅延を利用して発振周波数を制御します。
出力周波数範囲が広いため、一般的な PLL に使用されている VCO は Ring-VCO です。
ただし、LC-VCO や VCXO と比較すると周波数安定度が劣ります。
上図のように電流によって周波数を制御するのですが、こちらが電源ノイズによる影響を受けるためです。
しかし、低雑音クロックジェネレーターでは、電源ノイズの影響を抑える技術や、LPF の設計によって雑音の抑制が可能で、かつ集積化が可能なので、一般的な PLL に使用されています。
LC-VCO
LC 発振器はコイルとコンデンサーを繋ぎ、発振条件を満たすことで発振させることができます。発振条件を以下に示します。
このコンデンサーに、バラクタを接続することで VCO として使用できます。バラクタとは、可変容量ダイオードのことで、電圧によって容量を可変することができます。
LC-VCO は Ring-VCO よりも出力する位相雑音特性が低いため、位相雑音にセンシティブなアプリケーションに向けた製品の PLL に使用されています。
例えば、オーディオ向けの Zero Delay Buffer には LC-VCO を使用した PLL が搭載されています。
また、高周波数出力が可能なので、高周波数が必要な PLL にも LC-VCO が用いられます。
VCXO
VCXO は LC-VCO のコイルを XTAL ( 水晶振動子 ) に組み替えた構成になります。
Ring-VCO / LC-VCO と比較して周波数安定度が高いです。PLL の VCO として用いる場合には、 REF クロックが遮断された場合も、常にほぼ一定の出力を出力することができます。
このようなメリットがあるのですが、出力周波数範囲が狭いことと、Ring-VCO / LC-VCO と比較して回路規模が大きいことがデメリットです。
VCXO が用いられたPLLは、Jitter Attenuator ( ジッター減衰器 )などに用いられます。
ジッター減衰器は PLL でクロック信号を出力し直すことで、Jitter を小さくします。ただし、前述のように XTAL の回路規模が大きいため、XTAL を外付けしなくてはならないことがあります。
まとめ
アプリケーションの参考例
・Ring-VCO:メディアプレイヤー、デジタルカメラ、POS 端末など民生用電子機器全般
・LC-VCO:オーディオなど、低位相ノイズが要求されるアプリケーション
・VCXO:マルチアクセス通信システムなど、Jitter 精度の条件が厳しいアプリケーション
IDT 社のタイミング製品はラインナップが豊富なので、アプリケーション毎に様々な VCO が用いられています。
PLL が用いられたタイミング製品を選定する際は、今回の記事を参考に VCO にも着目してみてください。