Windows 10 から Linux を利用するための仕組みとして、WSL(Windows Subsystem for Linux)が利用できるようになっています。
この記事では、WSL を利用して Arria® 10 SoC FPGA 開発ボードおよび Cyclone® V SoC FPGA 開発ボード向けの Preloader / U-boot をビルドした際の手順を紹介します。
この「【その 1】 環境セットアップ編」では、WSL を利用するための環境設定について解説します。
注記:
WSL 上で Preloader / U-boot をビルドする手順については、「【その 2】 ビルド編」をご覧ください。
1. WSL(Windows Subsystem for Linux)とは?
- Windows 10 から Linux を利用するための仕組みです
- Windows 10(Fall Creators Update、バージョン 1709 以降)で利用可能です
-
従来、Windows 上で Linux を使用する場合は、仮想マシン環境を導入する必要がありましたが、WSL を利用することで簡単に低オーバーヘッドで Linux を使うことができます
- WSL 側からは、Windows OS 側の全てのファイル(Windows がアクセス禁止していないもの)やフォルダにアクセスすることができます
注記: WSL 環境には、最初にリリースされた WSL 1 の他に、Windows® 10 バージョン 2004 以降で対応している WSL 2(Windows Subsystem for Linux 2)という異なる 2 つの環境が存在します。これから紹介する内容は WSL 1 を対象としていますのでご注意ください。
2. WSL をインストールする
2-1. Windows 10 の WSL 機能を有効にする
(1)
Windows 10 の[スタート]⇒[設定] を選択し、[アプリ]をクリックします。
【図 1】 Windows の設定
(2)
[アプリと機能]から[プログラムと機能]をクリックします。
【図 2】 アプリと機能の設定
(3)
[Windows の機能の有効化または無効化]をクリックし、[Windows Subsystem for Linux](または[Linux 用 Windows サブシステム])にチェックを入れて[OK]をクリックします。
【図 3】 Windows Subsystem for Linux (Linux 用 Windows サブシステム )の有効化
(4)
[今すぐ再起動]をクリックして PC を再起動します。
【図 4】[今すぐ再起動]をクリックして PC を再起動
2-2. Microsoft Store から Ubuntu 18.04 LTS をインストールする
この例では、Ubuntu 18.04 LTS をインストールしています。
(1)
Windows 10 の[スタート]⇒[Microsoft Store]を選択します。Microsoft Store に移動するので、 “Ubuntu” で検索して[ Ubuntu 18.04 LTS ]を選択します。
【図 5】 Microsoft Store に移動して Ubuntu 18.04 LTS を選択
(2)
[入手]をクリックして、Ubuntu 18.04 LTS を入手します。入手が完了したら、[スタートにピン留めする]をクリックします。
【図 6】[入手]をクリックして、Ubuntu 18.04 LTS を入手
(3)
Windows 10 の[スタート]から[Ubuntu 18.04 LTS]をクリックします。Ubuntu の端末が起動するので、「ユーザー名」と「パスワード」を設定してインストールを完了します。
【図 7】 Ubuntu 18.04 LTS の起動
3. WSL の Ubuntu 環境で “apt-get” コマンドを使用してパッケージを更新/管理する
パッケージの更新には、次のようなコマンドを実行します。
● sudo apt-get update
パッケージ情報を更新します。
最新のパッケージ情報を、インターネットから取得してきて、ローカルにあるパッケージ情報を更新します。
● sudo apt-get upgrade
パッケージそのものを更新します。
update で取得したパッケージ情報に基づいて、ローカルにインストールされているパーケッジのバージョンが最新かどうかを調べて、古いものがあれば、更新パッケージをダウンロードしてインストールします。
以下にパッケージを更新する手順を示します。
(1)
社内ネットワークなどでプロキシがある場合は、apt-get する前に次のプロキシ設定をしておきます。
① vi エディターで、 /etc/apt/apt.conf ファイルを編集します
$ sudo vi /etc/apt/apt.conf
② vi エディター起動後、i をタイプすると入力モードになるので、下記のようなプロキシを追記します。
Acquire::http::proxy "http://your.proxy.address:proxy.port";
Acquire::https::proxy "https://your.proxy.address:proxy.port";
Acquire::ftp::proxy "ftp://your.proxy.address:proxy.port";
注記:
上記のプロキシ設定において、 your.proxy.address はプロキシアドレス、
proxy.port はプロキシポート番号 を意味します。
③ 書き込みをして終了させるので、ESC キーを 1 回押してコマンドモードにし、:wq をタイプ入力します(vi エディターの使い方についての詳細は Google 検索で調べてみてください)。
【図 8】 社内ネットワークなどでプロキシがある場合の設定
(2)
パッケージ情報を更新します。
$ sudo apt-get update
【図 9】 sudo apt-get update コマンドを実行してパッケージ情報を更新
(3)
sudo apt-get upgrade コマンドを実行してパッケージを更新します。
$ sudo apt-get upgrade
【図 10】 sudo apt-get upgrade コマンドを実行してパッケージを更新
(4)
Upgrade 途中で以下の表示が出た場合は、[No]を選択し Enter 入力し、[Ok]で Enter を入力します。
【図 11】 Upgrade 途中で表示が出た場合
4. WSL の Ubuntu 環境を⽇本語化する(必要に応じて)
必要であれば、 WSL の Ubuntu 環境を⽇本語化します。
⽇本語化するには、以下の手順とコマンドで行います。
(1)
日本語言語パックをインストールし、ロケールを日本語に設定します。
● 日本語言語パックのインストール
$ sudo apt-get -y install language-pack-ja
● ロケールを日本語に設定
$ sudo update-locale LANG=ja_JP.UTF8
【図 12】 日本語言語パックのインストールとロケールを日本語に設定
(2)
ここで一旦 Ubuntu の端末を終了してから、Ubuntu を再起動します。
(3)
タイムゾーンを「アジア/東京」に設定します。
$ sudo dpkg-reconfigure tzdata
【図 13】 タイムゾーンを「アジア/東京」に設定
(4)
日本語マニュアルをインストールします。
$ sudo apt-get -y install manpages-ja manpages-ja-dev
【図 14】 日本語マニュアルをインストール
5. リムーバブル・ドライブをマウントする(必要に応じて)
参考として、リムーバブル・ドライブを WSL でマウント/アンマウントする例をご紹介します。
● ローカルの D: ドライブとしてアクセスしている USB ドライブを、WSL でマウントする例
$ sudo mkdir /mnt/usb マウントポイントを作成する
$ ls –l /mnt 作成されたかを確認する
$ sudo mount -t drvfs d: /mnt/usb マウントする
$ ls /mnt/usb マウントしたドライブの内容を確認する
$ df /mnt/usb マウントしたドライブのボリューム・サイズを確認する
【図 15】 USB ドライブ( D: ドライブ)を WSL でマウントする例
● USB メモリを WSL からアンマウントする例
$ sudo umount /mnt/usb/ アンマウントする
次回「【その 2】 ビルド編」では、WSL 上で Preloader / U-boot を実際にビルドする手順について解説します。